ニカワのはなし



バイオリンなどの弦楽器は言ってみれば木工製品です。身近な木工製品というと皆さんは何を思い浮かべるでしょうか。 本棚や靴箱などを思い浮かべるかもしれませんね。でもそれらの木工製品とバイオリンとには大きな違いがあります。 その大きな違いの一つは、組み立てに際しての部品同士の接着の問題です。
本箱を作るときは、たいていの場合、釘や木ネジ、あるいは木工用のボンドなどといったものを使って部品同士を組み立てますね。 ところがバイオリンではこのようなものはほとんど使いません。その代わりニカワという 自然素材の接着剤が用いられます。



ニカワは、鹿などの動物の皮・腱・骨などを煮出して作られます。 市販のニカワは小ぶりなサイコロ型だったり、小さな粒状だったりします。これを一晩程度水につけたのち、 70~80℃のお湯で湯煎すると使える状態になります。
ニカワは、湿気や高温に弱いという欠点があります。
昨年の夏は猛暑で雨も多かったために、弦楽器には表板や裏板のはがれや、ネックがはずれるなどのトラブルが例年より多かったように思います。 もしニカワでなく、ボンドなどの合成樹脂の接着剤を使っていたら、これらのトラブルは防げたかもしれません。
新しい優秀な接着剤が開発されているのに、なぜバイオリンなどの製作には相変わらずニカワが使われるのでしょう。 これは何も単に昔からの楽器づくりの伝統を守っているということだけではないのです。
木でできている弦楽器は、長く使用しているとどうしても修理が必要になってきます。 そして修理時の分解ということを考えた場合、ニカワを使っていた方が好都合なのです。