実はストラディヴァリ達が作っていたのはバロックバイオリンと呼ばれるもので、現在製作されている モダンバイオリンとはいくつかの点で異なる特徴を持っています。
その違いを述べる前に、まずストラディヴァリ(1644〜1737)の時代の音楽とはどんなものだったかをみておきましょう。
彼と同時代の作曲家としてはビバルディ(1678〜1741) 、バッハ(1685〜1750)、 ヘンデル(1685〜1759)といった名前が 挙げられるでしょう。つまり、時代はバロック音楽の全盛期だったのですね。
ストラディヴァリの楽器も、まさにこういった同時代のバロック音楽のために作られた楽器といって良いでしょう。
そして当時の音楽会は、宮廷や貴族のサロンなどで催される比較的小規模なものが多く、 楽器に対しても現在ほど大きな音は求められていませんでした。

その後時代が下ると、音楽に対する嗜好も変化していきます。また、音楽が大衆化されたことにより演奏会場も より大きなものになっていきました。
こうした流れの中で、弦楽器にもいっそうの華やかさや、大きな音量が求められるようになったのです。
こうして19世紀になると、現在私たちが弾いているモダンバイオリンが生まれました。






バロックバイオリンからモダンバイオリンへの変化を大雑把にまとめると、楽器にかかる張力を増加させて、 より輝かしく大きな音が出せるようにしたこと、といえるでしょう。
増加した張力に対応するために、楽器自体も以前より少し頑丈に作られるようになりました。 (具体的には魂柱やバスバーの太さや厚みが増したことなどです)
そしてこの時期に、ストラディヴァリをはじめとするほとんどのオールドバイオリン(バロックバイオリン)にも、 モダン仕様への改造手術が施されたのです。
ですから、今ではストラディヴァリたちの楽器は、彼らが生前耳にしていた音とは、ずいぶん違う響きを奏でている ということは間違いないでしょう。
バロック時代の響きが失われてしまったのは何とも残念なことですが、そのおかげでこれらの楽器による、 古典派ロマン派音楽の数々の名演が生まれたことを思えば、あながち批判だけに終わらせることもできない かも知れませんね。